バイクの事って全然分からない。
たんきとうエンジン?とるく?ホイール?
(難しいな、知らない言葉ばっかりだ)
今朝、バイク通学中の琉夏くんたちと会った。
私は遅刻ギリギリで、まあ、結局遅刻して、大迫先生に叱られちゃったんだけど、バイクに跨る二人の姿が頭から離れなくて、こうして家に帰ってから琥一くんが言ってた「SR400」について調べている。
えーっと。
現在普及しているバイクとエンジンのタイプが違うから、鳥や馬に跨って駆ける様な躍動感と爽快感を得られる、発売から数十年間愛され続けているロングセラーバイク、ってことでいいのかな?
(何だか琥一くんが好きそう)
琥一君は持っている小物とか、服の趣味とか、さりげなくお洒落で格好いい。
身だしなみにも気を配ってるみたいだし、多分、こういう『知る人ぞ知る!』って趣味は琥一くんだよね。
琉夏くんは―――って、思い出したら急におかしくて、私は一人で笑っちゃった。
同じ兄弟なのに、弟の琉夏くんはシャツのボタンも適当だし、靴の踵は踏み放題、髪の毛は多分質がいいんだと思う、そうじゃなかったら今頃モジャモジャだよ。
(そうだよ、琉夏くんっていつも自分に無頓着で)
幾つかの出来事が脳裏を過ぎった。
途端、言い様のない気持ちが込み上げてきて、私の笑顔は引っ込んでいた。
(本当に無頓着なんだから)
外見の事だけじゃない、考え方とか、行動とか―――でも、琉夏くんは自分以外にはいつも気を遣っている気がする、例えば琥一くんに対してとか。
(兄弟ってあんな感じなのかな、私、兄弟がいないからよく分からないけれど)
二人でバイクに跨る姿は楽しそうに見えた。
お互いに心から信頼しあっているんだって、琉夏くんと琥一くんのこと、知ってる。
(でも、琉夏くんは、自分だけどうでもいいみたいに振舞うの、どうしてなんだろう)
私にも優しいけれど、本当は我慢していること、あるんじゃないかな。
溜息交じりにインターネットサイトの文字を目で追った。
SR400は1978年生まれ。
色々な改良が施されて、琉夏くんたちのバイクに近い形になったのは1985年ごろ。
モデルチェンジに至るまでの期間は約7年。
私がこの街を離れていたのも、それ位の間。
バイクの歴史だってこんなに色々あるんだから、人の歴史はもっとだよね。
(でも、それは話してくれるまで、訊いちゃいけないことなんだ)
わかっているつもり、でも、本当は私がいなかった間の二人の事、凄く教えて欲しい。
何をしていたのか、何があったのか、どうして二人でグレちゃったのか。
(いつか訊ける日が来るのかな)
その時、ちゃんと理解して、受け入れることが出来るように、今の琉夏くんと琥一くんのこと、もっと知っていかなきゃいけないんだと思う。
このバイクと同じ様に、クセのある二人だから。
SR400のエンジンのかけ方―――キックスタートって何だろう、もうちょっと詳しく調べてみようかな。
サイトからは管理人さんの愛が伝わってくるようだった。
私だって負けてない、好きならきっと頑張れる。
分からない単語とどうにか格闘しながら、私は長い時間SR400の記事を読み続けた。